「か……わいい……」


誰かのそんな声が沈黙を破った。



「きゃぁぁぁ!華沢さん!?なにそれ似合いすぎでしょ!?」


「て、天使が舞い降りたのかと思ったっ」


「これ、男子やばいんじゃない!?」



一瞬にして、騒がしくなった更衣室。


あたしは目を白黒させたまま、なっちゃんに抱きついた。



「うわっ」


「なっちゃんんんん!やっぱり嫌だぁぁぁ!」



〝理想の王子様〟という格好をしているなっちゃんにポロポロと涙を流しながら訴えかけると、頭を撫でられた。



「大丈夫よ。可愛すぎて問題はあるかもしれないけど、本当に似合ってるから」



それを言うなら、なっちゃんのその王子さまスタイルが似合いすぎてて眩しいよ!


ショートカットで、美人で、背も高くて、スタイルもいいなっちゃん。


あたしとは正反対なものばかりで、羨ましいというより憧れる。


そんななっちゃんとペアなんて、恥ずかしいにも程があるよ!



「ほら、おいで。せっかくなんだから、髪も可愛くしてメイクもね」


「……ぐすっ」

「泣かないの!メイクしにくくなるでしょ」



ペシッと軽く叩かれた額に手を当てて、鼻を鳴らすと、それを見ていたクラスメイト達が困惑した様子で顔を見あわせて近づいてきた。