「────…シキッ」
突然後ろから聞こえてきた、高くも低くも無い心地の良い響きをした声。
その声に、ハッと振り返る。
「っ……翔空」
夕陽に照らされて紅く染まった翔空の姿が目に映った。
肩で息をして若干顔を歪めている翔空に、思わず息を呑む。
「王子さまの登場……ってとこか。邪魔者は消えるとするかな」
「え」
「じゃーな、シキ。頑張れよ!」
「えぇ!?」
ヒラヒラと手を振って颯爽と行ってしまったお兄ちゃんに唖然としていると、翔空がゆっくりとあたしに近づいてきた。
……少し、戸惑いの表情をみせながら。



