「シキ?しっかりしろ!おい、発作か?」
「……救急車呼んだよ。お兄さん、誰?」
シキに触ろうとする男に、俺は敵意剥き出しで睨みつけた。
なんだよコイツ。
俺以外の男に、触らせたくない。
「おまえ、翔空か?」
「え、なんで俺の名前……」
突然俺の名前を言ったその男に、思わず目を見開く。
「やっぱりそうか」
「だからなんで俺の名前……」
「それはあとだ。救急車来たぞ。悪いが一緒に乗ってやって。俺は車で後を追うから」
「……わかった」
これだけシキの事を知ってるって事は、怪しい奴ではないはず……と判断した俺は、黙って頷く。
未だ苦しそうに顔を歪めて、咳を繰り返しているシキを抱く手に無意識に力がこもる。
小さくて、細い身体は苦しそうに震えて。
いつも繋いでいる手も小さくて、でも柔らかくて温かい手は、氷のように冷たくなっていた。



