◇翔空side



「シキ?シキ……っ」


腕の中の彼女は、俺の呼びかけに応える事なく、苦しそうに大きく肩を揺らしていた。


どうやら意識を飛ばしてしまったらしい。



「……くそっ」


シキの背中と膝裏に手を差し込み、抱き上げ花園を駆け抜けて行く。


俺の知ってる抜け道は、シキを抱いたままでは通れない。


ここを行くしかないか……


花園までの道は、最早、道と言えるのかもわからないくらいに障害物が多い。


このくらいならシキを抱いてでも走れるけど、それすらも、もどかしくて。


走りながら、腕の中をシキを見る。

昼、迷いながらもシキの教室に行ったら、シキはどこにもいなかった。


勝手な俺を嫌いになったのかと思って、怖くて探す事も出来ずに、1人であの、隠れ家に来た。


ふて寝もいいところだけど、ここならシキが会いに来てくれるんじゃないか……なんて、どこかで期待していた自分がいて。