「……お兄ちゃん」
「どうした?」
「あたしね、好きな人が出来たの」
「お、おぉ?なんか兄としては複雑だな、これ」
苦笑いしながらも、お兄ちゃんはあたしの言葉に耳を傾ける。
「……でも、気持ち、伝えられない」
素直に伝えられたらどんなにいいだろう。
「なんで?」
「離れるのが、辛いから。どうせまた、すぐ転勤になるもん……」
気持ちを伝えられない今よりも、離れた時の方が……きっと辛い。
大好きな人と離れるってすごく辛いものだよね。
お兄ちゃんが東京に行くって決まった時も、あたし散々泣いたもん。
「でもその程度の気持ちじゃないんだろ?」
「え?」
お兄ちゃんの言葉に弾かれるように顔をあげれば、ちらっとあたしを見たお兄ちゃんの瞳は優しい色を映していた。



