「どこか行きたいとこあるか?」 「ううん」 「なんか食べたいものは?」 「なにも」 「……相当、重症だな」 隣で車のエンジンをつけながら、お兄ちゃんは苦笑した。 「なら少し、ドライブでもするか」 「うん」 前にも、こうしてお兄ちゃんにドライブに連れて行ってもらったことがある。 確かその時も、あたしが落ち込んでた時だったっけ。 友達という友達がいないあたしに、いつもお兄ちゃんは優しくしてくれて。 落ち込んでると、いつも励ましてくれて。 大きな手であたしの頭を撫でてくれる。