キミと初恋、はじめます。



「シキ、いつも我慢してる」


「……っ」



俯いたあたしをしばらく見つめた後、翔空は小さく「ごめん」と言って、あたしから離れた。



「……俺、先行くね」


陰りを見せた顔のまま、翔空はあたしを置いて教室から出ていってしまった。

途端、あたしの瞳から涙が溢れ出す。


え?

なんで、あたし泣いてるの?


泣くつもりなんてなかったのに、次から次へと流れて来る涙に戸惑ってその場に座り込んだ。


どうして?

どうしてキミは、なんでもかんでも手に取るようにわかっちゃうの?


隠してたつもりなのに……

翔空は、なぜかすごく傷ついたような顔をしていた。


隠しても傷つけるなんて、あたしは一体どうしたらいいって言うんだろう。


本当は隠したくない。

あたしだって、翔空が好きなんだから。

でも、近づいたら離れられなくなる。


この気持ちは、出しちゃいけない……持ってはいけないんだよ、翔空。


────…引き裂かれる、だけだから。