キミと初恋、はじめます。



「シキ、俺走りたくないよー」


「いいから走る!」


「えー」



翔空の情けない声を聞きながら、あたしはそのまま手を引いてザクザクと刺さる視線の中、誰もいない教室に飛び込んだ。



「はぁ……」


やっと静かになった……。



「シキ」

「ん?」


呼びかけられた声に振り返ると、何故か呆れた顔をした翔空があたしを見下ろしていた。



「ダメだよ、こんな事したら」


「こ、こんな事って?」



あたし、なにかしただろうか。

首を傾けると、翔空は繋いでいたあたしの手をグイッと引っ張った。