「あのっ」
呼びかけられた声に、「え?」と振り返れば5、6人の男子達が少し緊張した面持ちで、あたしを見ていた。
「…はい、なにか…?」
「か、彼氏いますか!?」
あまりに突然の質問に、あたしはパチパチと目を瞬かせる。
彼氏?
そんなものいるわけがないじゃない。
彼氏どころか友達すら微妙なのに。
ふと見れば、彼らだけでなくクラスメイトのほぼ全員の視線があたしに注がれていた。
だいたい、初対面の人にそんな事を聞かれる筋合いはない。
少し嫌悪感を覚えながらも、初日からハメを外すわけにもいかずに、小さく溜息をついた。
「……いません。あたし、これから用事があるので失礼します」
少し冷淡だったかな、と踵を返しながら思ったけど、まあいいか。
きっとここでも、友達と呼べるほどの友達は出来ないだろうし。
あたしはそのままタッと駆け出して、教室を飛び出した。