君に、最後の長いためいきを

「よ。おめでとう」

「ありがとう!」


涙は出なかった。


代わりに割れてしまいそうなほど頭痛がする。


大丈夫。

……大丈夫だ。


言い聞かせて強く目を閉じる。


はあ、と短く嗄れた吐息がもれた。


『ためいきつくと、幸せが逃げるんだよ?』


「……知ってる」


柔らかな初恋が、閉じたまぶたの裏で蘇る。


『好きだったよ』


「っ」


俺も、好きだよ。


好きだったよ、ずっと。


愛しい人も、愛しい思い出も、ほんの少しだけ特別な呼び名も、愛しい小さな嘘も。


きっとすべてを過去にしよう。


いつか、そう、もう少し後で、必ず過去形にしてみせるから。


今日だけは、日付が変わるまで、お前のことを好きでいる。


「……はー……」


最後の長いためいきをついたなら、狂おしいまでの愛しさに、さよならを。




Fin.