君に、最後の長いためいきを

「ばーかばーか。あほ」

「ちょっと、何すんのさー!?」


……多分。


いつも耳元で弾ける明るい笑い声が、俺はとても好きだった。


「ほら、早く行こう。乗り遅れたら帰れなくなるだろ」


慌てて駅に駆け込む。


酔いは先程の衝撃ですっかり覚めていた。


乗り過ごしたら君の家に泊めてもらうからいいもん、とか何なんとか物騒な提案をする彼女を人波に押し込める。


泊まったら帰してやれないからやめとけよ、馬鹿。


「ここからは行けるだろ。帰り、気を付けろよ」

「ありがと。大丈夫、迎え頼んだから」


でも遠慮せずについて来てくれてもいいんだよ? などと阿呆な戯れ言を抜かすので、もう一度髪を乱してやる。


髪が乱れると面倒だから嫌、と言っていたのを忘れるはずもない。


もちろんわざとである。


「お前はアホなのか。行かないっつの」

「うわ、ちょっと、やめてって……!」


乱して乱して、俺の心は落ち着いて。


ごめんと繰り返す彼女の靴が、ヒールでないことに気付いた。