君に、最後の長いためいきを

「美味しいね」

「おう」


緩みきった頬で満足気に飲み続ける彼女に、俺はどんなに手を伸ばしても、届かないのだ。


覚悟していたはずなのに、知っていたはずなのに、どうしようもなく苦しい。


……このまま帰してしまうのならいっそ、本当にお前も酔えばいい。


泥酔して、一時でも彼のことを忘れてしまえばいい。


……少しの間でいいから、俺のことだけ、見てくれたなら。


だけど、ほら。


残りを今飲み干して、時計の針を気にしている。


そろそろ終電の時間だった。


「次で今日はもう終わりにしようか」


言いにくそうな様子に声を掛けると、彼女はほのかに安堵して頷いた。


できるだけ隠そうとしたのだろう感情に、ざわつく心内。


……悪循環だ。


残り少ないグラスを俺は一息で煽った。