君に、最後の長いためいきを

懐かしい話はしてくれない、彼の話ばかり繰り返す彼女のグラスは、こんな近くにいても、遠くにいる俺の知らない誰かで満たされている。


それは覆らない事実だ。


このバーボンを飲み終えたら、彼女は彼の元に戻るのだろうか。


迎えに来るだろうその人にもたれかかって、仲良く話をして、俺のことは友達、あるいは幼なじみ、と、つまらない記号で紹介するのだろうか。


……もし男だと聞いたら、彼女の大事なその人は、少しくらい、嫉妬するのだろうか。


それとも、ただ穏やかに笑うのだろうか。


分かりはしない、だけど。


彼が嫉妬する人であれば、矮小な俺の心は満たされる。


彼女の影にちらつく幼なじみをわずかにでも意識して、葛藤すれば。


どうせそんなものなのだと。


俺こそがその幼なじみだと。


彼女について、自分が知らない事柄もたくさん知っているんだと、……悩めばいい、と。


……なんて、なんて身勝手で醜い、感情だろう。