君に、最後の長いためいきを

「……くそ」


聞こえないように小さく呟く。


上昇した体温と赤くなった顔は酒のせいで誤魔化した。


からかってくる彼女によほどお前のせいだよとおどけて言ってしまいたかったけど、それはきっと言ってはいけない。


道化になったら、その瞬間、この幸せな二人きりの時間は終わりを告げてしまうだろう、なんて。


根拠のない確信は、何故か正しい気がした。


「お前全然酔わないのな」

「君が酔いすぎなんですー」


猫のように目を細めた彼女に、うるさいな、と返した呂律の回らない俺。


……少しくらい、酔えばいいのに。


そっちだけ平気でずるい。

ほんのちょっとでも酔って、そして俺の肩に寄りかかればいい。


とは。


どうしても言えなくて、俺からするのはもっとできなくて、微笑みから静かに目を逸らす。


「…………」

「…………」


どことなく気まずくて沈黙が続いた。


彼女はその間も、一人うまそうにグラスを傾けている。


大事に一杯を飲み干して、余韻をふわりと楽しんで、先に口を開いたのは彼女の方だった。