君に、最後の長いためいきを

冷えたグラスに結露した大気が水となって流れて、彼女の指先を濡らした。


その雫すらも羨ましい。


どれだけ近くにいても、お前の心に俺の雫は落ちないんだろう。




……俺には、もう、お前の気持ちに入る余地はないけど。


このバーボンがなくなるまではきっと、お前は俺の隣にいるだろ?


それ以上は望まない。


今夜のこの時間、おそらく数時間にも満たない時間、……だけどそれでもいいから。


何の話をしていたって構わないから、俺の側にいて欲しいんだ。


惨めな感傷に自嘲する。


本当の気持ちだけど、こんなことを真剣に願うあたり、少々酔い始めてしまったのかもしれなかった。


ちびちびと嘗めるように飲み進めていたつもりなのに、すぐに酔っ払った俺。


対照的に、店頭で自称上戸だと豪語した通り、強い酒ばかりをハイペースで開けていく彼女。


喉が焼けそうものを嫌味なほど隣で飲まれて、残り香、というか雰囲気、というか、横を見るだけでさらに酔いそうだ。


しばらく悪寒と戦っていたけど、あまりにも幸せそうに飲むので気づいた。


……ああ、そうか。


これは浮かれているのか。


その一因が俺と一緒にいることだというちっぽけな事実が、たまらなく嬉しい。


初めて飲む酒は俺と二人で、という約束は果たせなくなってしまったけど、どうせお前、自分がそんなこと言ったなんて覚えてないんだろ。


いいんだけどさ。


別に、覚えてなくたって。