「仁科さん?」

目の前にドカリと座ったやたらに大きなその人は、私の手元をジーっと見つめている。

「た、食べます?」

そっとお皿を差し出すと、ひとくちパンケーキを口に運んだ。

「うまいな」
「ええ、美味しいです」
「……あんたさ、ちゃんと泣けよ。見てて痛々しかった、さっき」

脈絡なく言われたその言葉は私を驚かすには十分で、手にしていたフォークを落として派手に音を立てた。

「クールビューティーってのはなんか血が通ってなく感じる言葉だよな。……あんたはどっちかっつーと、人間らしいよ。悲しいときとかツラいときに泣かないから自分でもワケわかんなくなるんだよ」

そう言って、大きな手を私の頭に乗せてグッと下を向かせる。
そしてその暖かくて大きな手でくしゃくしゃと私の髪を混ぜる。

さっき初めて会った男の人なのに。
訳もなく安心してしまって、その手が優しいから。

嘘みたいに、するすると涙が溢れた。
たぶんずっと、泣きたかったんだ、こんな風に。