私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~

「ま、お前の姉さん、プライド高そうだからな」
と前を見たまま、彰人が言う。

「だから、菅野と別れたんだろ?」

「えっ?
 菅野さんと居ると、なにかお姉ちゃんのプライドが傷つくことがあるってことですか?」

 彰人は答えない。

「それにしても、なんで、今日初めてお姉ちゃんと会ったばかりの彰人さんに、お姉ちゃんが突然別れた理由がわかるんですか?

 お姉ちゃんに、別に好きな人ができたわけでもなくて。
 うちの両親でもわからなかったのに」
と言うと、彰人は、

「お前の姉さんを見たからわかったんじゃない」

 そんな不思議なことを言う。

「小春」

 ふいにそう呼びかけられ、どきりとしたとき、彰人が身を乗り出し、キスしてきた。

 信号は赤だった。

「おお、間違った。こちびだ」
といつもの口調で言いながら、彰人は車を発進させる。

 いや、……間違ってるのは、こちびの方ですよ、と思ったが、口には出せなかった。

 なにかこう、今更ながらに緊張してきて。

 彰人のキスが、最初のときの罰ゲームのキスとは随分変わってきている気がしたからだ。