「なんで貴方はなんでもできるんですかっ」

 小春を待たせていた席に彰人が戻ると、彼女はそんなよくわからない文句を言ってきた。

 なんだ、そりゃ、と思いながら、小春の横に腰を下ろす。

「なんで、そんなに、なんでも出来るんですかっ。
 くやし〜っ」
と何故か地団駄を踏む小春を泉田が笑いながら見ている。

 珍しいことだ。

 いつも泉田は、自分が連れてくる女を冷ややかに見ているのに。

 それにしても、こちび。
 わからない女だ。

 何故、俺と張り合おうとする。

 なんでも出来るの、格好いいですねー、で終わりなはずだ。

 いつもそうだから。

 なにかコンプレックスでもあるのかな、この女、と思い、眺める。

 性格が、こちびなこと以外に。

 小春は、自分ではかなり過小評価のようだが、顔もかなり可愛い。

 まあ、花音には劣るが、とどうかと思うくらい、ぼんやりとした性格の妹を思い出す。

 真っ先に頭に浮かんだのは、子供の頃、家の砂場で、隣の家の拓海に砂をかけられ、自分にバケツで殴られても、ぼうっとしていた妹の姿だ。

 あのまま大人になってるからな……。