私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~

 いっそ、彰人でなければいいと思った。

 スマホを取るべきか、迷ってしまう。

 この間のことを思い出していた。

 後ろに目のない彰人さんは助けになんか来てくれない。

 だったら、こんなこと知られたくない。

 少し離れた井川は、上に乗ったまま、
「……出たら?」
と訊いてくる。

 確かにあの王様、出ないと大激怒しそうだ、と思いながら、手探りでそれを取った。

「も、もしもし……?」

『こちびか?』
と彰人の声が聞こえてきて、泣きそうになったが、ぐっと堪える。

 彰人さん、助けてっ。

 だけど、彰人に言っても、遠く離れた地に居る彼が助けられるはずもない。

 黙って、彰人の話を聞いていた。

 彼らしくもなく、ちょっと困ったように、たどたどしく話してくる。

 うぬぼれかもしれないが、あれ? この人、実は私のこと好きなのかな? とちょっと思った。

 だが、井川に乗っかられたこの状態でそれを確かめる勇気はない。