「莫迦なのか、お前は。
 花音は俺の妹だ」

 話を聞いた彰人に小春はいきなり罵られた。

 彼の手にはまだ、井川を脅すように持っているステープラーがある。

「だって……
 だって、言わなかったじゃないですかっ。

 美人で、彰人さんと親しいって情報しかなくて」

「美人なのは当たり前だろ。
 俺の妹なんだから」

 はあ、そうですね……と思っていると、見るか? と携帯の待受画面を見せてくれる。

 普通、妹を待受にするか?

 大丈夫か、この兄妹、と思ったのだが、そうではなかった。

 待受に写っていた人物は、確かに美しいが……

 美しい子供だった。

 しかも、男。

 ピアノを演奏しているところのようだった。

 彰人は、何故か勝ち誇ったように、ふふん、と鼻で笑い、
「これが俺の弟の昌磨だ」
と言ってくる。