私、あなたを呪ってマス! ~こちびOLと凶悪な先輩、芹沢彰人の日常~

 うう、と菅野は席へと後退していった。

 店の中でかけたりはしないだろうから、まだ、しばらく迷うつもりだろう。

 まったく、という顔でそちらを窺いながら、彰人は言う。

「ちょっと気になることがあるから、花音のことで」

 花音?
 電話で話していた花音さん?

 そうか、残念だな、とその名に泉田は引き下がる。

 誰っ、花音さんって、と思っていると、
「ちょっと待ってろ」
と小春に言い、彰人は店の中へと戻っていった。

 菅野の手にある携帯を取り上げ、勝手にいじると、どうやら、発信したようだった。

 慌てふためく菅野を置いて戻ってくる。

 それを見ながら、今だっ、と小春は、シャッと飼い主が居ない間に、煮干しの袋を引きずり落とす猫のように、泉田に話しかけた。

「あの、彰人さんは、週末、花音さんのところに行くんですか?」

 そんなつもりはなかったのだが、泉田は、そういう訊き方をしたことで、自分も花音を知っていると思ったらしく、
「そうみたいだね。
 彰人、今、ご執心みたいだから」
と笑う。