忘れられた塔

 不意に、旅人の歩みが止まります。ぽつりと透明な雫がはらはらと零れ落ちては、消えていきます。

 どれほどの月日が流れたのでしょう。
 
 叶うはずのない約束を抱きしめ、来ぬ人を待ち続ける孤独。

 どれほどの歳月、彼女はここで待っているのか。


 いつから? 


「……シオンの花、」


 旅人の震える唇から零れた言葉は、花の名前。

 彼は確信しました。自分がここに来た理由(いみ)を。

 呪いが解けたかのように、彼は階段を駆け上がります。


 叶うことのなかった、約束。一体どんな想いで、待ち続けたのだろう。この塔で、ひとり。


 長い長い旅の果て、ついに塔の頂へと辿り着いた時――――。





「“迎えにきました”」