忘れられた塔

 塔のなかは、不思議なほど静かでした。
 外の世界を忘れたような螺旋階段が蔓のように上へと伸び、旅人はただひたすら頂を目指しました。


 すると、頭上から花びらが舞い落ちるような歌声が聞こえてきたのです。



『時を失った この場所で

 ただ 月を眺める

 孤独 空虚 絶望

 最果ての終焉

 いつかいつか、きっと貴方は来るから

 シオンの花束を持って

 約束は果たされる

 悪夢は解けて 夜明けが始まり

 シオンの騎士と永遠を紡ぐ

 “わたしだけの騎士”に

 これは夜明けのうたーー』

 
 歌が終わる前に、旅人の瞳からは涙があふれていました。

 その歌にこめられた祈るような、今にも手折れそうな想いが、あまりにも深く、あまりにも優しかったからです。