忘れられた塔

 月灯りさえも届かない深い、深い森の奥。

 その最果てに、時を忘れたかのような古の塔がありました。


 すると、どこからともなく零れ落ちるのです。

 この世のものとは思えぬほど儚く、哀しい旋律が。

 その歌に誘われたのか、ある晩のこと。

 一人の旅人が、誘われるように森の奥へと迷い込みました。

 気づけば、いつの間にか塔の前に立っていました。



「今夜この森を抜けるのは難しそうだ。せっかくここまで来たんだ、塔に入ってみよう」


 塔の中は美しいままでした。

 あの歌が、聞こえてきます、塔の天辺から。

 一体この塔には、何があるのか。

 この塔の真実をこの目で確かめるために、旅人はおそれることなく進みます。