初恋ブレッド

「できた……!」

確認もちゃんとしたし、間違いもない。
一時はどうなることかと思ったけれど、無事に終わって良かった。

トレンチコートを羽織り部長に挨拶へ行くと、ちょうどPCの電源を落としたところだった。

「宮内部長、お疲れ様で……」
「遅いし送ってくよ」
「はい?」

部長は車のキーを私に見せて微笑む。

「えっ!い、いえっ!大丈夫です」
「……あ、彼氏とかにマズイか」
「かっ!?私なんかに彼氏がいるわけないじゃないですか。って、そんなことじゃなくて」
「じゃあ乗っていきなよ」
「ももも申し訳ないですっ!とんでもありません!」
「ハハッ、そんなかしこまらなくていいのに。パンのお礼」

私のパンなんて、お礼されるような物じゃないのに。
慌てふためく私を部長はトントンと口車にのせて、気づけば助手席にお邪魔していた。

「パン美味しかったよ!」
「全然、大したものでは……」
「そんなことないぞ。具と生地の甘さのバランスも調度良いし、なにより手作りのふわふわ感がたまらねー!」
「あ、ありがとうございます」
「自分で作るんだから凄いよなぁ。俺も毎日食べたいくらいだよ」

初めて家族以外の人に食べてもらって、誉められた。
例えお世辞でも嬉しいなぁ。
心が温かくなって、自然と頬が緩んだ。

「ふふ、あんなので良ければいつでも」
「本当かっ!!」
「え、……はい」
「本当だなっ!」
「……え?」



私は、全然かまいませんが。

明日もお裾分けする約束をしました。