目を覚ました私の視界に入ったのは真っ白な天井だった。
薬品の匂いが自棄に鼻に付く。
腕を見て、ここが病院だとわかった。
左腕に刺さった点滴。


あー、私倒れたんだ。
もう何週間もろくな食事をしてなかった。
喉を何も通らない。


そう原因は・・・山野君。


彼から近づいて来て、私の心を鷲掴みにして、私の心を持って行って。
それなのに、私が彼に溺れた時には、もう彼は居なかった。
私の傍には居なかった。


彼は何のために私に近づいたんだろう?
やっぱりただ私を揶揄っただけなんだろうか?


私が石田さんなのも、帰国子女なのも、ミス皇華なのも、元カレと別れたことも。
全部調べればわかることだ。


私が勝手に舞い上がり、一人のめり込んで行っただけなんだ。


温かい雫が私の頬を伝った。




「亜美・・・・・」
「お母さん・・・」


頬と伝う涙を拭い、母を迎え入れる。


「ごめんね、心配掛けた。有希も、ごめんね。ありがと。」
「大丈夫なの?」
「うん、ちょっと調子が悪くて御飯食べれなくって。」
「そう・・・・・」


母は有希から何か聞いたんだろうか?
何も私に聞いて来ない。


「亜美、家の鍵、くれる?必要な物、取って来てあげる。」
「え?どうして?」
「暫く入院ですって。」
「そんなに悪いの?私?」
「そうじゃないけど、一応ね。体力付くまで入院ですって。」
「ごめんね、お母さん。迷惑掛けて。」


ううん、と母は首を横に振り、病室を出て行った。
残された有希がベッド横のスツールに腰を掛ける。


「びっくりしたよ。ほんとに。」
「うん・・・ごめんね・・・」
「うん・・・・・」


きっと有希は言いたいこと、たくさんあるんだと思う。
けど、何も聞かないで、ただ私の横に付いていてくれた。
ただそこに有希が居ただけで、私の心は落ち着いた。