おばさんが、そこのことを言いに来てから数週間後、おばさんの言葉通り、亜美は俺の前から居なくなった。


小さかった俺にはその意味がわからず、何度も何度も母親にその意味を聞いた。


「亜美ちゃんはアメリカに行ったのよ。」


アメリカってどこだよ?
どうして、そんなとこに行くんだよ?
なんで俺から離れんだよ?


俺は亜美が居なくなったことを受け入れることが出来ず、当時通っていた幼稚園を何日も休んだと言う。


あれからだ。
俺の心はずっと亜美を探し、求め、欲して来た。


小学生になっても冷めた子だと言われ、中学生になった頃には、そこがカッコ良いとモテた。
それは高校に進学しても変わらず続いてて。


モテても仕方なかった。
俺が欲しいのはただ一人。
そう、亜美だけだったから。




その亜美に、やっと会えた。
やっとこうやって会えたって言うのに、また引き離される。
けど、俺は彼女を手に入れる方法を思いついた。



「大誠。俺、この大学受けるわ。」
「はぁ?何言ってんの?お前にこの大学は無理じゃね?」
「いや、受ける。ってか、受かってみせるよ。」




中高と面だけは良かった俺は、勉強もせず、部活もせず、ダラダラとした生活を送っていた。

中学生の頃、当時、知り合った大学生の女に童貞を捧げた。
誰でも良かったわけじゃない。

もちろん亜美となら、どんなに良いだろうと思ってはいたが、思春期真っ只中の俺は理性には勝てなかった。


高校に入れば、俺の面だけに寄って来る女はいくらでも居て、性欲の捌け口として何人もの女を抱いた。
けど、そのどの女も俺の心の隙を埋めれるヤツはいなかった。


そんな生活を送ってる俺が、偏差値の高い皇華大に行けるはずもない。
俺は人生で初めて、親に土下座した。



「予備校に通わせてください。」


それからの1年半、俺の生活は一変した。
言い寄る女達を全部切り、死に物狂いで勉強した。
周りのヤツは俺の気が狂ったとまで言うヤツも居た。


どうしても、亜美と同じ大学に行きたい。
一刻も早く、亜美と同じ大学に入って、彼女の傍に行きたい。






俺は知らなかったんだ。
亜美がいくつだったか?なんて。
ただ、俺より少し上だと思ってた。
1つか2つ上だと思ってた。


俺が皇華大学に合格し、晴れて同じ大学に通うことになった春。
亜美は社会人になっていた。