玄関を出たところで、エレベーターから降りた山口さんが、小走りで駆けてくるのが見えた。
「あ、桃子さん!!」
なにやら、コンビニの袋を2つ3つ提げて私の前で立ち止まった。
「はぁ、はぁ… 遅くなって…すいません…でしたっ!アフレコが…はぁ…押して…」
ちょっとメタボな山口さんは、地下駐車場から走ってエレベーターに飛び乗ったようで
少し走ると息切れがしてしまうようだ。
「山口さん、こんなとこじゃなんですから、部屋、入りましょ」
持っていたマスターキーで再びドアを開け、部屋に戻った。
リビングに入り、机にコンビニの袋を置くと、ソファに座った山口さん。
「あ、桃子さん、良かったらコレ召し上がってください。 恭輔が食べられそうなものと一緒に
適当に見繕ってきましたから」
そう言って、コンビにの袋のものを出した。
スポーツドリンクをはじめ、栄養ドリンクや、栄養補助食品、そして
おにぎりやサンドイッチ、カップめん、プリン等々。
「助かります! 何か作ろうかと冷蔵庫開けたら、見事に食材がなにもなくって…
うちの部屋に戻って、なにか作ろうかと思ったので。」
「こんなもので申し訳ないです。このお礼は必ずさせていただきますので」
「そんな、お礼だなんて…」
畏まって、お互い頭を下げていると…。
「やったぁ、たらこマヨおにぎりっ! 山口さん、コレもらうね!」
すっと、机に並べられたおにぎりへ、杏の手が伸びた。
「あ、杏っ、“いただきます”は?」
「はーい」
いつもなら、“ったく…ウルサイな”ぐらいな表情をするのに、山口さんがいるからか、
妙に素直だわ…。

