恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

「スーツケースに荷物詰めろ」

突っ立ったまま驚きを隠せない私に、雪野翔は短くそう言うと再び私の腕を掴んだ。

「あ」

引っ張られた途端、足が縺れた。

ペタンと床にヘタリ込んで、私は初めて自分が震えていることに気付いた。

いつの間にか、腰に力が入らなくなってる。

「おい」

雪野翔が私を冷たく見下ろして、チッと舌打ちした。


『怖がってる女に何してんだよ』


確かさっき、雪野翔はこう言った。

そうだ……。

私、怖かったんだ。