恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

ムッとした暑い日に入ると、スーッと冷ややかで気持ち良かったし、春でも秋でもとにかく空気が違うように感じたから。

マイナスイオンってやつだ、多分。

今日は満月で、明るいし……よし。

私は道路からそれて溝をまたぐと、少し坂になっている竹やぶへと足を踏み入れた。

その途端、長い間忘れていたある記憶が蘇ってきて、私は竹やぶの中で立ち止まった。

あれは……まだあるのかな。

あれっていうのは、小さな小さな鳥居のある祠(ほこら)。

小学生の頃、この竹林の中で迷子になった時、偶然見つけたんだよね。

人なんか入れないような小さな祠に、沢山のぬいぐるみがお供えしてあったの。

そのぬいぐるみは何故か全て犬のぬいぐるみで、私は凄くビックリしたのを覚えている。