恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

もう一歩彼が私に近付いたから、私はまた一歩下がって雪野翔を見上げた。

「ついでに言うと……アイツ」

……なに……?

「片瀬……旬だっけ?バスケ部の」

ドキンと鼓動が跳ねた。

思わず眼を見開く私に、雪野翔は不敵な笑みを見せて頬を傾けた。

「アイツがお前に惚れてるとでも思ってんの?」

……ひどい。

「雪野先輩に関係ないじゃないですか」

「佐川の事もお前に関係ねーだろ」

雪野翔はそう言うや否や、ニヤリと笑い私を見据えた。

「……じゃあな。後で泣くなよ」

言い終えると同時に踵を返し、雪野翔は渡り廊下から姿を消した。

─アトデナクナヨ─

ヤな奴!

でも私はどうしようもなく不安で、重い扉を開けると無我夢中で駆け出した。