恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

今日は体育がなかったから、髪を結んでこなかったんだ。

「見えない……」

風が乱暴に髪を乱すから前が見辛くて、私は思わず呟きながら俯き加減で髪を整えようとした。

「きゃ!」

その時ドン!と誰かにぶつかり、私は後ろへよろめいた。

非常階段は狭い。

壁は打ちっぱなしのコンクリートだ。

「ごめんなさい!」

私は咄嗟に謝った後、次に背中に来るであろう衝撃に備えてギュッと歯を食い縛った。

その直後、誰かに腕を引かれたの。

んっ?!