恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

「どうしよう、取れない」

その時、

「チビ」

「きゃあああっ」

誰もいないと思い込んでいた部屋の隅から急に声がして、私はビクッと身体が跳ねた。

たちまちのうちにバランスを失い、椅子が回転してグラリとよろけた。

ダメだ、落ちるっ!!

その時、フワッとシトラスの香りがした。

それと同時に、ガシッと誰かに抱き止められる感覚。

「チビでドジなんて救いようがねえな」

……眼を開けたくなかった。

だってもう、私には分かってしまったんだもの。