恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

六つあるデスクのうちのひとつに、数冊の資料が積み上げられていて、私はゆっくりそこに近寄るとホッと息をついた。

「オーストリア……ハプスブルク家……これだ」

……あれ?

ふと見上げた資料棚に、あと一冊ハプスブルク家関連の本が残ってる。

マリア・テレジアとフランツ……これは要らないのかな?

いや、二度も取りに行くはめになるよりは、一度に済ませたい。

私は背伸びしたところで届かないであろう最上段を見上げてから、手近にあった椅子を引き寄せた。

……怖っ。

脚立置いといて欲しい。

回転する椅子に上るのは安定せず凄く怖い。

棚のガラス戸にしがみつきながらソッと手を伸ばすも、クルーンと椅子が回転してしまい、転げ落ちそうになって冷や冷やする。