恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

そう思ったのもほんの束の間で、私はクラスメートの視線と笑いを一身に受けて赤面した。

「初っぱなから居眠りした罰だ。準備室から俺が忘れてきたハプスブルク家の資料取ってこい。机の上にまとめてあるから」

「……はい。すみませんでした」

大嫌いな世界史は本当に眠い。

加えて寝不足だったんだもの。

そんな事言えるわけもなく、私は教室を出て資料室へと向かった。

渡り廊下へと続く両開きのドアを片方押して開けると、ムッとした熱い風が私の髪をメチャクチャに乱した。

視界が遮られ、慌てて顔に張り付いた髪を整える。

「はあ……」

準備室は静まり返っていた。