恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

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「……本」

やだ、雪野翔なんじゃない?!

「夏本」

霧の中から、切れ長の鋭い眼が私を見ている。

「夏本っ!」

きゃあっ!!

「だ、誰にも言いませんっ!」

慌てて立ち上がった途端、周りから笑い声がして、私はハッとしながら辺りを見回した。

直後にすぐ眼の前で、筒状に丸めた教科書でポンポンと手のひらを叩く先生と眼が合う。

「なにが、『誰にも言いません!』だ。どんな夢見てるんだ、お前は」

ああ、夢だったのか、良かったあ。