恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

バケモノ。

今でも、眼を見開いて腰を抜かし、ガタガタと震えた葉月を覚えている。

……何故なんだろう。

『今見た事は全て忘れろ』

何故、俺は瀬里に暗示をかけなかったんだろう。

地味で言葉数の少ない目立たない瀬里なら、暗示などかける程でもなく、脅しつけていれば十分だと思ったからか?

……いや、違う。

瀬里が……アイツが、狼の姿の俺と眼が合った時、怯えなかったからだ。

そして俺は、あの時の瀬里の瞳が忘れられないでいた。

確かに瀬里は驚いていた。

だが、それだけじゃなかった。