恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

「真神へ祈りを捧げ、潔く死を受け入れろ」

「凰狼様を殺すなら、私も死にます!」

な、に?!

凰狼の喉元ギリギリのところで、俺は剥き出していた牙を止めた。

眼だけを桜花に向けると、彼女は両手で短剣を握り、ピタリと自分の喉に押し当てて、俺を睨んでいた。

涙にくれた瞳と短剣が、夕日を反射し朱色に光る。

おそらく桜花は本気だ。

血相を変えた凰狼が、小刻みに首を振った。

「やめろ、桜花」

「嫌よ!こんな争いは馬鹿げてる!天狼神の子孫だろうが真神の子孫だろうが関係ないわ!どちらも同じ人狼よ!」

桜花は昔から物静かで大人しかった。