すると彼は一瞬僅かに眼を見開いてから、私をギラリと睨んだ。

「殺されてぇのか、お前は」

……なんで?!

誰にも言わないって言ってるのに、なぜ彼が怒っているのかが分からなくて、私はもう一度ポツンと呟くように言った。

「犬だった事は、絶対内緒にします」

すると彼はマジマジと私を見つめた後、チッと舌打ちした。

それから私の身体を離すと、

「よく覚えてろ。口は災いの元だ」

両手をスボンのポケットに突っ込んで、彼は私を肩越しに振り返った。

「いいな」

私は恐怖の余り、非常階段をかけ降りる雪野翔の背中を見つめながら後ろへよろけた。