恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

やだ、こんなの。

惨めで、恥ずかしくて。

苦しすぎて見ていられなくなって、私は先輩から顔を背けた。

その時フワリと風が動いて、先輩の大きな手が私の頬を優しく撫でた。

「俺が愛してるのは瀬里だけだ」

キャアッと控えめな女子の悲鳴と、ウオッという男子の嬉しそうな声が混ざり合ったとき、予鈴が鳴った。

「こらー、何してるんだ?さっさと行けー」

理科の高橋先生が足早に渡り廊下を進んできて、皆、追い立てられるように各教室へと散らばっていく。

たった一つの予鈴で、さっきまでの出来事が、まるで無かったみたいに感じる。

里緒菜先輩も身を翻して去っていき、後には私と雪野先輩だけが残った。

「瀬里、放課後迎えにいく。教室で待ってろ」

「はい……」

渡り廊下を吹き抜ける風が、髪を乱して視線を遮ぎり、そう言った先輩の表情を見ることができなかったけど、私の胸のドキドキは激しくなるばかりだった。

だって先輩の声が、凄く凄く柔らかくて優しかったから。