恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

「テメェ、ぶっ殺すぞ」

こ、怖すぎるーっ!

私は恐ろしさのあまりギュッと両眼を閉じて身体を強張らせた。

二の腕に彼の指が食い込んで、痛さの余り顔が歪む。

次の瞬間、コンクリートの非常階段に、タン!という足音が響いた。

だ、誰か来てくれた!

いや絶対、私の為じゃなくてただの通りすがりだろうけど。

怒りながら女子に詰め寄るなんて構図は頂けないわけで、私は当然雪野翔が素早く離れてくれる事を期待した。

離れた瞬間、猛ダッシュで逃げる算段だ。

……ああ、なのに。

「わ」