恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

は……よ、よかったあ……!

ヘナヘナとその場に座り込み、私は大きく息を吐いた。

身体中汗ビッショリで、思いの外緊張していたことに気付く。

……もしかしてこれは、興味本意で祠に近づこうとした私を、犬神様が戒めたんだろうか。

幻想を見させて私に警告したのかもしれない。

恐怖心というよりは申し訳ない気持ちになって立ち上がると、私は制服についた草や土をはらい落とした。

それから落とした拍子にボタンが外れ、中身が飛び出してしまった油絵セットをかき集める。

……ごめんなさい。

私は、祠を見つめるとペコリと頭を下げた。

それから元来た道へと踵を返して、急ぎ足で歩き始めた。

もう二度とここには来ないと心に誓いながら。