恋した彼は白金狼《プラチナウルフ》

油絵セットがガサッと音をたてて落ちる。

嘘でしょ?!

油絵セットを落とした音で、雪野翔がこちらを向いた。

いや、もはや雪野翔かどうか分からない。

だって私を見たソレは、月と同じ色をした大きな大きな犬だったんだもの。

ショックのあまり気絶する美少女をテレビで見たことがあるけど、美少女じゃないせいなのか私の意識はハッキリしていた。

昔サファリパークでみた雄ライオン並に巨大な白い犬が、私を真正面から見据えているという事実。

ちょっと待って、これってどうすればいいの?!

眼をそらした方がいいのか、そらさずに後ずさって一気に背を向けて逃げるのがいいのか。