「……アイツの事は忘れろ」

私と眼の高さを合わせる為に、 先輩が屈んだ。

切れ長の眼の、綺麗な黒い瞳。

いつもは怖いその瞳が、今はなんだか優しくて、私は耐えられなかった。

「で、も、だけどっ、私、小さい時からずっと旬が好きでっ」

言葉が嗚咽で途切れる。

雪野先輩はそんな私を見ていたけど、ポン、と大きな手で私の頭を撫でた。

「好きだった気持ちを無駄と思うな。アイツを思うとき、お前は幸せだったんだろ?」

確かに切なくて、だけど幸せだった。

「確かにガキの頃のままじゃいられねぇが、今のアイツがお前の求めてるアイツじゃないなら、もう諦めろ」

「ううっ、ひっく」