「愛華、いなかったから」
まるで私の心の声が聞こえていたかのようにそう答えてくれた響に、なるほど、と心の中で納得する。
立ち止まっていた足を再び動かそうとしていた、その時。
「ちょ、響!?」
スッと身を寄せてきた響が私の右肩をそっと抱き寄せた。
まさか響が学校でそんなことをするなんて思わなくて、踏み出した足が再び制止する。
「いいから黙ってろ。お前、顔色悪い」
そう言って右肩を抱く手に力を込めた響は、有無を言わさず私の肩を抱いたまま歩き出した。
吏架子とみっちゃんに助けを求めようと肩越しに振り返れば、真後ろにいたニ人はニヤついた顔でシッシッと犬を追い払うかのような素振りをして。
……はぁ。
思わず心の中でため息をつく。
どうやら大人しく観念するしかないらしい。


