サヨナラケイジ

ゾッとした。

誰もが言葉を発することもできずに、ただただ橘をみている。


「あなた、刑事でしょう? こんなことしていいと思ってるの?」


低い声で言うよしこちゃんが野球選手のようにフライパンを握った。


「思ってるからやってるんだ。ふん、どうせ誰にも言わずにここまで来たんだろ?」


そう言うと、橘はすばやく友季子の腕を引っ張って後ろから抱くようにした。


「キャッ」


右手にいつのまにか何か握られている。


「なっ! 危ないじゃない!」


よしこちゃんの悲鳴にも似た声に、もう一度橘の右手を見て、それが拳銃であることを知った。


「・・・きょうちゃん?」


かすれるような友季子の声。


「ほら、早く中に入って来いよ。でなきゃ、こいつを撃つ」


「ひ、卑怯じゃない!」


「うるさい! さっさと入れ!」


怒号に押されるように、よしこちゃんが扉を開けたままゆっくりと中に入る。


「そう、それでいい。そこでひざまづけ」


銃身を前後に振って、床を指す橘の表情はまだ笑っていた。