「でも、望美の小さい頃の話、一度聞きたかったんだ」

「き、聞いたって何もないよ!」

「いや、望美のことまた知ることが出来た」

その言葉に、私の胸が高鳴る。

「あらあら、お熱いことで」

「な、奈々美さん!」

ほんとにもう……。

「あの奈々美さん」

「なに奈津くん?」

奈津の表情が真剣なものへと変わる。

「奈々美さんに、お願いがあります」

「え?」

「奈津?」

「俺は、世界でサッカーをするのが夢です。でも、それはいつになるか分かりません。でも、俺が世界で活躍出来るサッカー選手になったら…」

奈津は、一度間を置いて言った。

「望美を、俺にください!」

「…それは、望美を幸せにするということでいいかしら?」

「はい!」

奈々美さんは、じっと奈津の顔を見あたと、にっこり笑った。

「なら、望美を貴方にお願いするわね」

「あ、ありがとうございます!」

「奈津…」

涙が出そうになった。

まさか、ここで奈々美さんに言うなんて思ってなかったから驚いたけど、私は凄く嬉しかった。

「じゃぁ、これは菊ちゃんに報告ね」

奈々美さんは、そう言うと何故か携帯を取り出す。

「えっ?」

「あの、これは?」

「さっきの奈津くんの言葉、しっかり録音させて頂きました」

「…はぁ?!」

ど、どういうこと?!

「実は、菊ちゃんからね、もしかしたら奈津くんが、望美の事で何か言うかもしれないから、録音お願いしますって言ってきたの」

「あの野郎…」

奈津は、拳に力を込める。

「あ、ははは… 」

まんまと菊さんの罠にはまったわけだ。