【ルル】

『――!』

私は、後ろを振り返る。

「ルル?」

私の様子に気づいた望美が私を見てくる。

『な、何でもないよ』

望美にそう言い、前を向く。

(今、シンクの力を感じた)

シンクに何かあったのかな?

誰かに襲われたとか…。

そう考えた時、蝶の鱗粉が私の隣で弾けた。

『シンク?!』

すると、いつの間にかシンクが隣にいた。

でも、その様子はおかしく、息が荒かった。

『どうしたの?!』

『な、何でもないよ!ちょっと猫に追いかけられて』

『猫に?!』

猫に追いかけられて、ここまで息があがるのかな?

『心配してくれてありがとう、ルルは優しいね』

『そ、そんなことないよ』

だって心配になるよ。

『でも本当に大丈夫だから』

シンクは、前に出て試合を見る。

『奈津達勝ってるね』

『そ、そうだね』

シンクの腕には、何かで強く巻き付けられたあとがある。

(もしかして、シンクを誰かが狙ってる?)

もしかして、シンクがいた扉の中の世界と関係してるのかな?

知らない内にシンクが抜け出してて、またシンクを攫いに来たのかもしれない。

それなら、シンクを守らないと!

『ルル』

シンクに名前を呼ばれ目を向けたとき、私の体に鳥肌が立つ。

『余計な事は、しなくて大丈夫だよ』

この時シンクは優しい表情をしていた。

だけど、私に威嚇するようにシンクの力の気配は強かった。

『わ、分かった』

私は、納得するしか出来なかった。