【シンク】

『んっ?』

何か気配を感じた。

ほんの一瞬だったから、それがある何処からなのかは分からない。

『私と同じ力の気配…』

もしかして、私の持ち主かな?

でも、気配を感じても記憶は戻らない。

『はぁ…何で記憶がないんだろ?』

記憶を戻すため、あちこち行ってみた。

見覚えのあるところは数カ所あったけど、何も思い出せない。

『見つけたぞ』

『えっ…』

後ろの方で声がして、振り返る。

『貴方誰?』

見覚えはあったけど、確か……。

私は、そこで扉のことを思い出す。

『あーっ!貴方私を閉じ込めた人ね!』

『良く思い出したな。俺は、お前を捕まえに来たんだ』

オルドは、私に手を差し出す。

『戻ってこい。お前が外に出るのは早すぎる』

『早すぎるってどういうこと?私は一体何なの?』

彼にそんな事を聞いてみる。

『お前は、この世界にとって異物の存在だ』

『異物の存在…?』

異物の存在って、どういうこと?

じゃぁ、私は存在しちゃ駄目ってこと?

『だから、俺はお前をあの世界に閉じ込めた。何故あの扉が開いたかは分からないが』

オルドの目がカッと見開いた時、私の体は鎖で繋がれる。

『いたっ!』

『さぁ来い、シンク』

『嫌だ!』

私は、体に力を込めて、繋がる鎖を壊す。

『その力…、やっぱりお前は異物の存在だ。この世界では―――』

私は、体を蝶へと変えて、その場から逃げる。

『チッ…。あれでは、俺でも追えないか…』

オルドは、追うのを諦めて、再び姿を消した。