妖精の心を貴方に2 真紅の妖精

【望美】

それから数日が経って、私は正式に美術部に入部した。

私がこの一週間で一番驚いたのは…。

「未だに有水さんが、何もしてこない…」

そう、有水は私に何もしてきていない。

奈津にすら何も…。

「でも、それはそれでいいんじゃない?」

「そうだよ、何かしてきたら怖いよ」

今私たちは、教室でお昼を食べている。

「そういえば、その肝心の小早川は?」

「玲緒くんたちと、食堂行ってるよ」

「ほー」

今日は珍しく、奈津のお母さんが寝坊して、奈津は食堂に行っている。

「なぁ望美」

「成瀬くん?」

私たちのところに成瀬くんが走ってきた。

「奈津見なかったか?」

「奈津?奈津なら食堂だよ」

「そうか……」

成瀬くんは、じっと私を見てくる。

「お前さ、奈津と付き合ってんの?」

「え?!」

突然変なことを聞いてきた。

「つ、付き合ってるよ…」

私の声は、徐々に小さくなる。

「…そうだよなぁ、部活見学の時にそんなことチラッと言ってたしな」

「そ、そうなの?」

「あぁ、“俺には、望美しかいない”とか言ってたし」